2015/03/07(Sat)
(No.305) 何事も知・好・楽の三段階がある
皆さんご存知の「論語」の中でも、比較的良く知られている次の章句があります。
「之(コレ)を知る者は、之を好む者に如(シ)かず。之を好む者は、之を楽しむ者に如かず」と言う行です。如(シ)かずとは及ばない、劣るの意味です。この文を短く圧縮して「知・好・楽」の教えと言われているため、ご存知の方も多いと思います。
この章句の意味は「あること(之コレ)を知っているだけの人よりは、それ(之)を好きになった人の方が優れている。また、それ(之)を好きになった人よりは、そのこと(之)を楽しんでいる人の方がもっと優れている」となるでしょう。
孔子に言わせると「之コレ」はイクォール「学問」と言うことになるでしょうが、「之」に該当するものは色々と考えられます。学問などの勉強、野球やサッカーなどのスポーツ、ピアノなど楽器の習い事、芸術や芸能、ビジネス界なら仕事や経営など、その他たくさん当てはめることができます。
「知る」「好む」に続いて最後の段階は「楽しむ」という最高の境地ですが、三段跳びの様にすぐに訪れるとは限りません。長い一生をかけてこの段階に至る人もおられるかも知れません。「好む」から「楽しむ」に至る道のりは決して平坦ではないことがわかります。
どの様な領域でも、習い事や学びは最初は皆がゼロからのスタートになります。色々なものに触れ、知識や技能を身に付けることによって、それまで分からなかったことが分かるようになり、できなかったことができるようになり、次のステップへと進んでいくものです。
ただ「好んで」学んでいけば、そのうちに「楽しみ」の境地に至るという単純なものではないでしょう。時には苦しみを経ながら長年一つのことに集中してこそ、本当の学問の楽しみは得られるのではないでしょうか。
現代の人々は私を含めて、すぐに答えが出せないかとそればかり求めている様な気が致します。「学びとは本来苦しいものだ」と言うことを忘れているからなのでしょう。皆さんは「之」という言葉に何を当てはめられますか?今の仕事でしょうか、経営でしょうか、スポーツでしょうか、ゴルフなどの趣味でしょうか、それとも何かの研究に打ち込んでいるテーマなのでしょうか。人それぞれ様々なテーマが考えられます。各人に共通したテーマは人生というテーマかも知れませんね。
自分がどのくらい人生を楽しんでいるかを振り返って見るのも何かの参考になるかも知れません。仕事と人生とは切っても切れないものでしょうが、もし仕事をリタイアされたとしても人生はまだまだ長く続きます。何か好きなものを見つけ楽しむものが見つかれば、幸せな人生になるのかも知れません。
我々すべてが人生の晩年に至ったときに、自分がどのくらい人生を楽しんできたのかをはっきりと答えられるように、先賢の生き方に学びそれを一つの手本として、まだまだ長い人生を歩いて行きたいと思っています。
我々すべてが人生の晩年に至ったときに、自分がどのくらい人生を楽しんできたのかをはっきりと答えられるように、先賢の生き方に学びそれを一つの手本として、まだまだ長い人生を歩いて行きたいと思っています。
仕事と人生は別ものではなく、一対、一体で切り離すことができないものでしょう。充実した仕事が充実した人生を創るのでしょう。仕事を通して得た悟りは、人生を深める道でもあることを先賢は教えています。
ここで福沢諭吉の心訓の言葉が浮かんで参ります。
「世の中で一番楽しく立派なことは、一生涯を貫く仕事を持つことです。世の中で一番淋しいことは、する仕事がないことです」と。ここでも「楽しむ」という言葉が使われています。一生涯を貫く仕事を持ってそれを楽しめ、それが一番立派なことだよと言っています。リタイアなど微塵も考えていない様ですね。終身現役・生涯現役を薦めている様です。よって仕事に対する心構えを今一度、振り返ってみましょう。お互いに。
「楽しんで 仕事をすれば 長寿くる 好きだけでなく 楽しむことだ」
「楽しめば 長寿まっとう 元気よく 使命天命 天職楽し」の歌が浮かんできます。
先述の論語の中の「知・好・楽」の他に「先苦後楽」「喜怒哀楽」という言葉もあります。「先苦後楽」とは、何事も最初から楽を求めてはいけないよ、何事もまず先にあるのは苦なんだよ、その苦を乗り越えた後に楽が待っているのだよ、との意味です。何事も苦を避けて進んで行けば楽ではあるでしょうが、先に天国を体験すれば、後は地獄しかないのだよと言っている人もおられます。
「苦難こそ 成長の鍵 チャンスなり 苦難を避けず 逃げずに向かえ」ピンチはチャンスなのです。
「逃げたなら 解決策も 逃げていく 苦から逃げるな 先苦後楽」と言われている通りなのです。
「苦難には それと同じか それ以上 大きな恵み 含まれている」苦が人を育てるからです。
また、よく使われる「喜怒哀楽」の熟語で「楽」が一番最後にあるのは、辛い試練を乗り越えてこそ大きな喜びを得られるのだよ、と上と同じ様なことを言っている様です。
最後にしますが、古典に「楽天知命、故に憂えず」(易経)とあります。ここでも「楽」がありますが、これは天命を信じきって天命を楽しむのですよ。もし、その心境になれば、きっとあなたの憂いはなくなりますよと現代に生きている私達に教えているのでしょう。小さいことにクヨクヨせずに天を相手に大きく生きていきたいものですね。私を含めて。