(No.387) 気力を養う (その13)
また、気力は必ずしも健康状態に関係はありません。身体が健康でも無気力の人もいれば、大きな病を持ちながらも気力が充実している人もおられます。生死に関わる大病を何度も患いながら、それを気力で乗り越え、8000メートル級の山を無酸素で登頂する男性もおられます。
この「気力」は一体何処から生じるのでしょうか?「気」はバッテリーのように使って消耗するものではありません。「気」は交流することで初めてその力を得ます。気を出すことによって新たな気が入って来て、そこに天地自然の気との交流が生まれます。以前にも書きましたが、気の交流が活発な状態のことを「元気」と言います。
「気力」とは気の交流を活発に維持する力を指しています。元々、気は交流しているのが当たり前ですが、不自然な心の使い方・身体の使い方をすることによって停滞してゆきます。
気が停滞すると心を自由に使えなくなります。それによって様々な不具合が生じます。「気と心」の関係は「空気と音」の関係に似ています。その空間に空気があることによって、音は周囲に空気の振動として伝わりますよね。心の状態もそれと同じで、そこに気が通っていることによって初めて、心の状態は周囲に伝わってゆくのです。
つまり、経営者・リーダーが「心に強く思う」だけでは周りに伝わらないということです。経営者・リーダーが思い描く理念やビジョンが周囲に伝わるかどうかは、会社や組織全体に「気が交流」しているかどうかで決まるということです。それだけ気の交流は組織運営にとっては重要なテーマになるのです。
気の交流そのものに特別な感覚がある訳ではありません。しかし、様々な実感を通して確認することができます。例えば「元気」そのものに特別な感覚はありませんが、「身体が軽い」「食事やお酒が美味しい」など実感を通して確認することができます。
また、気が交流しているときは、見えている範囲が広く、周囲のことを良く感じ取れています。逆に気が停滞しているときは、見えている範囲が狭く、周囲のことを全く感じられません。状況把握も正しい判断もできない状態になっています。この実感を通して、気が交流しているかどうかを確認することができるのです。
特に注意して頂きたい点は、自分(自社)のことばかり考えているときは気が完全に停滞しているということです。このようなときに、どうしたら気が交流するように戻れるかが重要になります。すぐに実践できることは、以前に説明しましたが「気の呼吸法」の実践になります。呼吸を通して自分自身と外界の交流を再確認することで、また気が交流するようになります。
その他の方法については、人によって様々ですが、自然の中に身を置くのも良いかもしれません。現代の生活では長時間ノートパソコンやスマートフォンに触れていて、無意識のうちに見えている範囲が狭くなり、周囲のことを感じられなくなっています。自然のなかで過ごすとそれがリセットされることが良くあることです。
あるいは思い切って、誰かのために働いてみることも良いでしょう。「誰かのために働く」という行為そのものが気を出すことなので、新たな気が補給されて、気の交流が活発になります。精神的に辛いときでも、思い切って誰かのためにと動き出した結果、元気になった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。(この点は以前にも書きました。当経営コラムNo.375をご参照下さい)
まとめますと、「気力」とは、どの様な状況でも気が活発に交流する状態を持続する力を指しています。特に困難や逆境に直面したときに気力が発揮されるのです。ですから、経営者・リーダーは、「知力」「体力」だけではなく、「気力」を養うことが重要であるということなのです。
他方で、教育や訓練によって「気力」とか「やる気」を養うことは極めて難しいものなのです。本人が自ら求めて養わない限り、外から与えることはできません。ゆえに、会社や組織において気力ややる気のある人材を得るには、研修などに依存することではなくて、初めから気力のある人を採用する必要があるということになります。(この点も以前に書きました。当経営コラムNo.384をご参照下さい)
もし、経営者・リーダーを育てるのであれば、気力のある人を育成候補とすることです。一般的には、育成においては知識・技能などを主にした能力を最優先で評価・判断しがちですが、それらの能力は時間を経た後での訓練によっても向上が可能であり、また期待もできるものです。
しかし、いくら能力があっても気力ややる気がなければ物事は絶対に成就しません。今後は人の採用や育成においては、「知識や知力」よりは「気力」という物差しを持つことが重要であるということになるでしょう。「気力」を最優先して判断して下さいね。将来、絶対に後悔しないためにも。
(次回に続きます)
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