(No.413) 「水風井」 井戸に学ぶ危機管理のマネジメント (1/3)
易経に学んでみたいと思います。易経には「水風井」(すいふうせい)という卦(か)があります。「水風井」は井戸から学ぶ話しで、とても有名な教えの一つです。色んなことが学べる卦であります。
井戸の役割と特性、構造やその管理方法の教えは組織の在り方や、マネジメントについて教えています。組織を健全にするにはどのような管理をすべきなのか、井戸の構造からその知恵を学ぶことができます。
井戸は泉と違って自然にできたものではありません。人間が造った設備になります。「井」という字は古い字では「丼」と書いていました。井の中に「テン」が付いています。現代の様に「どんぶり」とは読みません。この「丼」が本来の「井」という文字の原型になります。
なぜかと言うとこの「テン」がないと、本当の井戸の役目を果たさないからです。実はこの「テン」は釣瓶(つるべ)を表しているのです。釣瓶と吊り糸・吊り縄がなかったら、井戸があったとしても水は汲めませんですよね。ここは大切なところになります。
「水風井」の卦の説明文によりますと、「井(せい)は邑(ゆう)を改めて、井(せい)を改めず」とあります。邑(ゆう)とは村や町のことです。ここは「町や都は移り変わっても、井戸は変わりません」と言っているのです。人間は水がないところでは生きてはいけません。必ず水のあるところに人は住みつきます。町を移動することはできても、井戸の場所は移動することができませんよ、と言っているのです。
そして井戸の水は、どれだけ汲み上げても尽きることはありません。もし汲まなくても井戸の水が外にあふれ出ることはないでしょう。井戸はその土地にあるものですから、その水を飲む人が井戸によって命を養われるのです。そこに来る人、そして行く人、万民に井戸の水は与えられます。誰もが公平に利用できるのが井戸になります。井戸が万民を養っているのです。
もし吊り糸や吊り縄が井戸の底の水に届くだけの長さがなかったとすれば、新鮮な水を汲み上げることができません。それでは井戸の役目を果たすことができません。また、例え吊り糸が底の水に届いたとしても、釣瓶(つるべ)が壊れていたら、水がこぼれて漏(も)れて、人が飲むことは絶対にできません。これでは凶と言うことになります。
その様に井戸は人を養って窮まることがないと言われています。この井戸は人間社会にとって凄く必要なものなのです。だから、この井戸の設備から、また、この井戸の役割から多くを学びなさいよと言われているのです。
そもそも井戸水というものは、汲み上げられて初めて人を養うものであります。また井戸は人が造る設備ですから必ず、何らかの管理が必要になります。なぜかといえば、吊り糸が届かなかったら用をなしませんし、釣瓶(つるべ)が壊れていたら人を養うこともできません。また吊り糸がもし切れてしまったら、同じ様に役目を果たすことができません。
それから水は澄んで冷たく、清潔で安全なものでなければなりません。泥水が混じっていないかどうかをチェックしなくてはいけません。そのためには、底の泥をきれいにさらって安全な清水がたまるように管理が必要になるのです。
もし井戸の内壁がきちんと瓦(かわら)で固められていないならば、汚いものがにじみ出てきて壁がはがれて泥が落ちてきて、水に混じり込むかも知れません。そういった管理も必要になるでしょう。これらの視点で、人々を養う役割を担っておられるリーダーや企業の問題として考えて行きたいと思います。
(次回に続きます)
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