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    山口一道

    Author:山口一道
    山口経営コンサルタント事務所 代表
    YMCグループ 代表理事
    一般社団法人アジアビジネス連携協議会(ABC) 顧問

    長崎大学経済学部卒
    経営コンサルタント業歴40年超
    人間学・経営学など幅広いテーマに対応 
    リーダーのあり方に警鐘を鳴らし、若手経営者の育成に力を注いでいます。

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2017/05/20(Sat)

(No.420) リーダーに必需の「黄金の耳」とは? 易経に学ぶ (2/2)

(かなえ)とは大人数の食をまかなうための大鍋のことでした。煮炊きすると温度が上がって手では触れられないほど熱くなります。そのために祭りの場所へ運ぶ際には、左右の耳につるやロープを通して担いで運ぶのです。この時、左右に付いている耳が重みにしっかりと耐えるようでなければ、せっかくの食べ物をひっくり返してしまい、祭りも行えず、食べ物を皆に供することもできません。

  この耳の位置にあるのが王の立場・トップリーダーの立場であり、このことを例えとして「王様は聞く耳がしっかりしていないとダメなのですよ」と言っているのです。

 

卦象(かしょう、陰陽の六本の(こう)ではトップリーダーにあたる下から五段目の陰の爻(こう)が耳、最上の六段目は「つる」になります。つまりトップリーダーが聞く耳を持っていなければ、まつりごともなせず、人や社会を養うという重責にも耐えられないと言っているのです

 

  火を使うことで、生では食べられないものがごちそうに変化します。つまり役に立たなかったものが役立つように改まる、変化することを意味しています。我々は人の意見や言葉に目から鱗が落ちる様な思いをすることがあります。

 

多くの賢明な意見をトップリーダーの「聞く耳」は気づきだけでなく、役に立たなかったことや、あるいは思い悩んでいたことを改革して、役に立つように変える作用があります。だから前述致しましたが、君主の「聞く耳」の姿勢のことを「黄金の耳」と呼ぶのでしょうね。

  卦辞(かじ)に「(そん)にして耳目聡明なり」とありますが、「巽(そん)」は従順、柔軟という意味であり、トップリーダーが賢人に対して「自分の方が、あなたよりも政治のことはよく知っているぞ」との姿勢では賢人の明知、才知を用いることは決してできませんよ、と教えています。

 

逆に「確かな情報を聞きたいのです、お願いですから教えて下さい」という柔軟で謙虚な姿勢を持つことで、賢人の明知を用いることができますよ、と教えているのです。

 

  トップリーダーがその様な姿勢と態度で接するならば、「あぁそうなのか、だから私はあの時、失敗したのか」とか「あの時に下した判断と私の見解は正しかったのだ」とか「あの方法を取れば、間違いかも知れないと迷っていたが、この方法を取れば上手く行き、もっと良くなるかもしれない」などと、全ての物事が明らかになってゆくのですよ、心配はご無用ですよ、と教えています。

 

よって将来を洞察することや、兆しを観て察することも、聞こえないことを聞く心の耳と、見えないものを見る心の目が、この二つの力が相まって、耳が聡にしてかつ目が明らかになることから始まってゆくのですよ、つまり「耳目が聡明」になるのですよと説かれております。

 

この様に、トップリーダーには「聞く耳」が絶対に必要であるし、また、「黄金の耳」はリーダーの必需品であると、易経は何度も説いています。それは今も昔も聞く耳を持たないトップリーダーがあまりにも多いからでしょう

 

自分のやり方に固執して、人の意見などを受け付けない人、あるいは聞いてはいても、自分の腹の中におさめない人、また自分の都合のいい情報しか入ってこない環境を作っている場合など様々でしょうが、どの場合も聞く姿勢がないからでしょう。地位が上がり権力を持つようになると、人間誰でも傲慢になり驕りが出てきて人の意見など聞き入れなくなるのですね。人間の弱さが出てくるのでしょうね

 

  トップリーダーは賢人から聞いた情報をただ聞くだけではなく、腹に入れてよく煮詰めて考えて組織や社会に役立つものに生かしていかなくてはいけません。リーダー個人だけでなく、組織全体の体制としても同じことがいえるでしょう。それには、トップリーダーがそのような組織環境やシステムを作っていくことが必要になるでしょう。

 

トップリーダーが「聞く耳」を持つということは、自然体ではなくて、あえて人の意見を聞く環境づくりをしなければ、「聞く耳」は持てないものということなのです。「聞く」という姿勢をアピールして自分の耳目となって働く有能な人材を集めて養うことが大事ということなのです。リーダー個人だけではなく組織全体で環境を作り上げることが大切であるということになるでしょう。

 

具体的なやり方は皆様方の案に期待したいと思います。人が環境を造ることを忘れないで下さいね。人間が偉大になればなるほど素晴らしい環境を造るものであります

 

古代中国では聞く姿勢を持つ君主のもとには、賢人がどんどん集まり、君主は「耳目聡明」になって、正しい政治を行なっていました。そして国が繁栄し賢人が多く集まれば集まるほど、「(かなえ)は大きく重くなっていくのです。「聞かない」習慣や環境のもとでは、正しい情報提供者である賢人は決して君主のもとには寄り付かなくなり、残念でありますがその君主は、いずれは「鼎」(かなえ)の軽重を問われ(能力や権威を疑うの意)、衰退していく国ということになってゆくのです。

 

今回のテーマは、現代の経営でも充分に応用ができる考え方であります。活学を期待します。

 

 

 

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