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    山口一道

    Author:山口一道
    山口経営コンサルタント事務所 代表
    YMCグループ 代表理事

    長崎大学経済学部卒
    経営コンサルタント業歴35年
    リーダーシップをはじめ幅広いテーマに対応 
    リーダーのあり方に警鐘を鳴らし、若手経営者の育成に力を注いでいます。

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2019/09/06(Fri)

(No.537) 日本の資産が売られている、資産を守れ!!(2/2)

  漁業権の民営化は安全保障に直結している】

 

前述の水道事業と同じ様に、次に取り上げたいのは、日本の「漁業権」も民営化されようとしている点です。これまでは、海洋資源の乱獲や海の汚染を防ぐために、漁業協同組合(漁協)が一定のルールを定め、組合員に漁業権を割り当てる形で漁を行ってきました。

 

しかしながら、先の東日本大震災(2011年3月11日)の際、宮城県では復興の名の下に漁業関係者の反対を押し切って、日本初の水産特区を導入しました。漁業権を企業に渡し、漁業の株式会社化を推進しています

 

その結果、参入した合同会社の社員になった漁業者の手取り収入は、社外の漁業者に比べて大幅に低下して、事業は赤字になりました。さらに、地域の漁業関係者で取り決めた出荷日前に出荷をしたり、他県の牡蠣(かき)を宮城県産として売るなど、県のブランドを傷つける身勝手な行動が繰り返されたのです。

 

そもそも企業が守るのは、海でも地元でもなく株主であるということに気づかなければなりません。かつて、大分県と高知県でハマチ養殖に参入したノルウェーの企業は、5年連続赤字を出して突然撤退をしました。雇われていた地元の漁業者は設備投資分の借金を抱えたまま、多くの方々が廃業いたしました。企業が自己都合で撤退し地方経済が崩れたとしても、誰も責任を取ってはくれないのです。当たり前ですが、冷たいものであります。

 

また、四方を海に囲まれている日本にとって、漁業権を外資や民間企業に開放することはさらなるリスクをもたらすことになるでしょう。漁業活動を名目に、海外の船が自由に日本の領海に入って来てしまうでしょう。中国船が尖閣諸島にやってくる度に大騒ぎをする人達が、なぜ漁業権を外資や民間企業に売ることを問題視しないのでしょうか?私は不思議でなりません。

 

ところが欧州の国々はこうした問題については非常にシビアな考え方なのです。彼らが国家予算を投じて自国の農業・農家を手厚く支援するのは、土地や食を守ることは安全保障の問題であると考えているからです。日本も目先の短期的利益ではなく、百年先までの長期的なスパンで物事を見据え、国境の先まで広く見据えた国造りをしていかなければならないのではないかと考えております。

 

【老後の安心はもはや幻想に】

 

次に3つ目のテーマに移りたいと思います。視点を変えて日本が直面している介護の分野を見てみましょう。我が国は世界で高齢化のトップランナーであるにもかかわらず、日本では介護業界の人手不足は年々深刻になっています。仕事内容がきついのに賃金が全業種平均給与よりも10万円以上も安く、人がすぐに辞めてしまうからです

 

ではどうすれば良いのでしょうか?例えば、資格があったとしても別な仕事についている、約53万人もの介護職の賃金を上げて労働環境を改善するだけで、大きく状況は変わることでしょう。実際にそれを望む声は、現場や関係者たちからも繰り返し出ています。

 

しかし、政府が選んだのは、さらに低賃金で働く外国人労働者の方でした。語学力やビザのハードルを下げて、受け入れを拡大したのです。「老後」が投資商品として売買される現在の世界では、現場の介護職員の報酬は低ければ低い程歓迎されます。前にも述べましたが、水道事業と同様に、いま介護ビジネスも世界的な優良商品として急成長しているのが現状なのです。日本政府が規制緩和する一方で、アメリカの大手在宅介護サービス会社や中国の投資ファンドマネーが日本の介護ビジネスに次々と参入してきているのです。

 

外国人労働者を受け入れること自体に反対は致しませんが、優先順位がおかしいのではないかと思っています。介護ビジネスが利益を出しやすいように労働者を安く働かせるよりも、国がまずやるべきことは、日本人介護職員の待遇改善や、技術力を持つ国内の中小企業の支援ではないのかと思います。介護が贅沢品になってしまった貧困大国のアメリカの後追いをしてはいけないと考えております。

 

【売られたものは国民の力で取り戻そう】

 

今だけ・目先のみ、金・損得だけ、自分だけ」の強欲資本主義の3拍子から、私たちの貴重な資産と幸せに生きる権利を守り、取り戻すためには、いま何が起こっているのかを一人ひとりが正しく知って行動を起こしていくしかありません。まだ今なら間に合うし、この流れは十分に変えることが出来るでしょう。私たちの一瞬一瞬の選択が未来を作っていくのです。

 

四半期利益ではなく、百年先も皆が共に健やかで幸福に暮らしていける社会を描くことが重要であります。本コラムでは3つの大きなテーマに絞りこんで考察して参りました。日本の国が持っている、かけがえのない宝物を国民全員で守っていかなければ、将来はないのではと思っております。

 

 

 

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・人間学  ・経営学  ・経営戦略  ・人材育成  ・組織運営 

 

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2019/09/13(Fri)

(No.538) 大企業の不祥事はなぜ続くのだろうか? (1/3)

  【名門企業の不祥事が相次いで発覚する理由は?】

 

この数年来、東芝や日産、神戸製鋼、日立、スバル、ススギ、三菱自動車、三菱マテリアル、スルガ銀行、かんぽ生命といった大手企業の不祥事が相次いでいます。実名を書くことをお許しいただきたいと存じます。まだまだこのコラムに書ききらないほどあるのではないでしょうか?この様に世界に冠たる名門企業が信用を失い、凋落してゆく様子には残念ながら言葉もありません。

 

企業による不祥事は今に始まったことではなく、一昔前まで企業の不祥事と言えば、生産地や賞味期限などを偽る食品偽装が最も目立っていたのを覚えておられると思います。生活に身近なだけに国民の関心も高く波紋も大きかったわけですが、食品を取り扱うのは主に中小零細企業で、一企業の不祥事が世界にまで影響を及ぼすことは、まずありませんでした。

 

ところが、近年発覚する不祥事はそれとはレベルが異なっていることに気づかされます。重厚長大産業として日本の経済力の根幹を支えてきた超巨大企業の問題が次々に明るみになり、その信用失墜、経済的損失は日本経済の屋台骨を揺るがす事態にまでなっている様な感じです。

 

アルミや鉄鋼製品の検査データを改ざんし国内外の取引業者や消費者に甚大な影響を及ぼした神戸製鋼の問題に至っては、実に30年前から続けられていたと言います。長年溜まったウミが、ここにきて一気に噴き出した形ですが、悪質な不正がなぜいま明るみになったのでしょうか。そこにはいくつかの要因が考えられると言われています。

 

一つにはバブル時代からその崩壊とリストラにより従業員の団結心や忠誠心が燃え尽きたためです時代の流れ、働き方の多様化とともに、かつて日本企業の強みだった団結力や会社を守ろうという忠誠心は確実に低下して、それに伴って社員による内部告発の機運が高まっているのです

 

加えてSNSなど情報ツールの普及で不特定多数の人に向けて発信しやすくなったことも、発覚リスクが大きくなった理由になります。SNSで炎上した情報に後からメディアが飛びついて騒ぎ始める、というケースもこのところ目立つようになってきた様です。

 

【日本企業のガバナンス・システムは機能していない】

 

不祥事の案件は大きく「ガバナンス(企業統治」の問題と「コンプライアンス(法令遵守)」の問題の二つに分けることができます。ガバナンスという言葉には社長が企業を統治するとのニュアンスがありますが、そうではありません。社長こそ、株主や社外取締役から統治を受ける立場にあり、ガバナンスとはこの牽制(けんせい)作用になります。統治を受けた社長が主体となって役員や社員のリスクマネジメント(危機の管理)を行うのがコンプライアンス(法令遵守)なのです。

 

2015年に発覚した東芝不正会計問題は、赤字決算を認めようとしない社長が取締役会や社外取締役と情報を共有することなく、現場に無理な利益確保を要求したものです。これなどは外部者によるガバナンス(企業統治)内部統制システムが機能しなかった典型的な事例になります。一方、コンプライアンス(法令遵守)の問題としては現場独自の判断でマンションのくい打ち工事を手抜きしたり、食品の原料を偽ったりするケースなどがあげられるでしょう。

 

(次回に続きます)


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2019/09/20(Fri)

(No.539) 大企業の不祥事はなぜ続くのだろうか? (2/3)

  ガバナンス・システム(企業統治システム)が機能していないのは決して東芝に限ったことではありません。日本独自のガバナンス・システムが世界でも異例なケースなのです。株主に代わって経営者をコントロールすべき取締役会が社長の部下である業務執行者で固められていることなど、又、監査役には取締役会での議決権がなくトップを解任できないことなど、そこには様々な矛盾をはらんでいます。そういう日本ならではの特有な馴れ合いの体質が不正を温存し助長していることは明らかな事実であります。

 

東芝はその弊害を補う目的で、早くから海外のモデルを参考にして指名委員会等設置会社をつくり、社外取締役を設けていましたが、結果的にトップの暴走を抑えることができませんでした。社外取締役に企業会計についての十分な知識や理解力がなく、胆力もなかったから、トップの意向に流されてしまったのです。

 

社外取締役には優れた専門性に加えて、トップにおもねることなく自己の信念や判断に基づいて行動する気概と独立性が強く求められます。会社に何らかの恩義を感じている取引先関係者を選ぶようでは、いずれナアナアになり、せっかくの内部統制システムも機能しなくなってしまうでしょう。有効なのは、弁護士、会計士といった職業倫理を旨とする独立したプロフェッショナルを入れることです

 

実際、海外では弁護士や会計士を社外取締役に迎えるケースが数多くあります。弁護士は違法カルテルや食品偽装、労働基準法違反などに目を光らせ、不正会計を監視するには優れた公認会計士の存在が欠かせません。

 

アメリカには120万人の弁護士と、30万人の会計士がいて、相当数が企業内で働いています。しかも、アメリカの弁護士はロースクールでは職業倫理、独立性を徹底して叩き込まれ、切磋琢磨しながら激しい競争社会を生き抜いていきます。

 

ところが、日本はどうでしょうか?現在、弁護士は約4万人、公認会計士は約3万人で、少人数によるもたれあいの世界です。企業で働いている弁護士はまだ2000人で若年層が中心です

 

参考として、アメリカの人口は日本の約3倍で3.2億人になります。人口比で単純に比較しても、弁護士や会計士の数は非常に少ないのではと考えてしまうのは私だけなのでしょうか。アメリカは訴訟社会と言われていますが、それにしてもと考えてしまいますよね。

 

日本企業の内部統制システムを十分に機能させようと思えば、トップに迎合しやすいメンバーに代わって専門性、独立性の高い弁護士、公認会計士を入れることは大変有意義であり、そのことを考えれば現在の法曹界と会計士界の仕組みそのものを変革する時期に来ているのではないかと思います。

 

また、アメリカの企業にはゼネラル・カウンセル(法務担当役員)というポジションがあります。社長に次ぐ高い地位と権限を有し、コンプライアンス(法令遵守)に関する全責任を負います。社員の不祥事により社長の責任が問われる場合は、アメリカではこれをコンプライアンスの問題と捉えてゼネラル・カウンセルが矢面に立って責任を取ります。いわば社長を守り、会社の信頼を失墜させないための重要な役割を担っているわけです。

 

残念ながら、日本にはこの様な役職者はほとんどいません。このプロフェッショナル力の差が日本の経営者のガバナンス(企業統治)とコンプライアンス(法令遵守)の弱さに繋がっていることは否定できないと思います。

 

(次回に続きます)

 

 

 

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2019/09/27(Fri)

(No.540) 大企業の不祥事はなぜ続くのだろうか? (3/3)

  【現場からの通報は評価しなくてはいけない】

 

しかしながら、内部統制に力を入れたところで、現場で起こる全ての不正にまでは目が届きません。神戸製鋼では納期に間に合わせるという理由で検査データを改ざんしました。三菱自動車は他社との競合に焦るあまり、ガソリン1リットル当たりの燃費を偽装しました。そのような改ざんや偽装はトップの指示ではなく、現場が勝手に判断して行っていることが多いのです。見抜けるのは現場で働く人だけなのです。

 

その現場の声を上層部に安心して伝えることが出来るのが内部通報制度なのです。しかしこと日本の企業においては、制度はあっても現場はまず不正を通報しようとは考えないでしょう。その後の犯人捜しと不利益な取り扱いを恐れるからです。

 

東芝の不正会計問題では、現場の社員が内部通報制度によって不正を伝えたものの、それが受け入れられなかったために証券取引等監視委員会に告発しています。不正に対して疑問を持つ現場が通報してくれるおかげで社長は退任を免れ、会社の名誉は守られるのです。

 

現場で何が起きているのかを直視して、早急に改善することこそが大事なのに、誰がどんな動機で通報したのかとそればかりに執着して、肝心の不正には目をつぶり、隠蔽(いんぺい)する。組織内の軋轢(あつれき)を避けて、もたれ合いを是とする日本企業の悪弊と言う他ありません

 

現場が不正を行う要因として、過重な負担を強いられていること、も指摘しておく必要があるでしょう。工場を例にとりますと、長年現場を支えてきた熟練工が定年でいなくなった場合、会社は人件費を抑える目的で新人や非正規の社員を採用し、その穴を埋めようとします。

 しかしながら、技術や能力がないスタッフばかり多く集めたところで、生産性と現場力が高まるはずはありません。より質の高い製品を、より多く生産せよという上層部からの圧力で、中堅社員たちは悲鳴を上げているのです。

 

むしろ、人件費は高くとも三人前働いてくれる能力ある人材を積極的に採用し、あえて人間の力を必要としない仕事はAI(人工知能)に変えて行くというバランス重視の企業努力が会社に活力をもたらし、業績の向上にも繋がると思います。

 

経営者が忘れてはいけないのは、そこで働く人間を皆ハッピーにすることです。生産性を向上させ労働時間を短くする「働き方改革」は必要だとしても、社員の幸福感をその根底に据えて置かないと、企業の力そのものを失速させてしまい、社内に不平不満の火種をくすぶらせることになってしまうでしょう。

 

【前例踏襲が通用しない時代になりました】

 

事件を起こす企業に共通するものの一つが社員のコミュニケーション力、つまり人間力の欠如になります。社内の風通しが良い企業であれば、現場の社員から部門長、部門長から上層部へと不正の事実が伝わり、全社を挙げてそれに対処するというムードが自ずと生まれて行きます。

 残念ながら、日産の新車無資格審査問題も、神戸製鋼の検査データの改ざん問題も、幹部社員がそれを知っていながら、黙殺していました。そこにはコミュニケーション力も、一流企業としての誇りや矜持(きょうじ)も感じられません。

 

企業の不正防止にはガバナンス(企業統治)とコンプライアンス(法令遵守)が大事であることは前述致しましたが当然であります。しかし、いくら制度を改革してもそれを担うのは人間なのです。制度を生かせるかどうかは、ひとえに人間力にかかっていることを忘れてはいけないのです

 

最後に、不祥事を起こした当事者がよく口にする「前例踏襲」という言葉について触れておきます。社会が激変し、いまや前例踏襲が全く通用しない時代に突入いたしました。20年から30年前の法律や習慣がそのまま通用するのか、時には立ち止まって冷静に考えてみることも必要でしょう。

 

寝食を忘れて猛烈に働いていた、かつてのサラリーマンの常識を今の若者に伝えていても、彼らは聞く耳は持たないでしょう。「働き方」について意識の転換を求められるように、企業の文化も制度も仕事のやり方も前例踏襲のままでは新しい時代に対応できなくなっています。

 その変化に向き合って、会社を変えて行くことこそが不祥事を防ぐコンプライアンス(法令遵守)になるのではないでしょうか?ご一考を!!

 

 

 

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