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    山口一道

    Author:山口一道
    山口経営コンサルタント事務所 代表
    YMCグループ 代表理事

    長崎大学経済学部卒
    経営コンサルタント業歴35年
    リーダーシップをはじめ幅広いテーマに対応 
    リーダーのあり方に警鐘を鳴らし、若手経営者の育成に力を注いでいます。

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2020/04/03(Fri)

(No.567)最低賃金の引き上げが、日本経済の特効薬では?(1/4)

  今年に入ってから、新型コロナウイルスの発生と蔓延が続き、世界的な流行に発展し、地球規模で経済と社会活動がほとんど萎縮してしまいました。世界中が大騒ぎの状態であります。我が国でも各方面で相当な影響が出ている模様であります。

 

このコロナショックとは直接関係ないにも関わらず、我が国はとっても長い間、なぜ経済的に停滞しているのでしょうか?今回はその理由と今後の経済再生のための方策を考察してみたいと思います。

 

【日本経済の長期停滞の根本的な原因とは何か?】

 

最近アベノミクスの「異次元の金融緩和」が、あまり効果がないのではないかという声が高まっております。お金をガンガン刷っても内需は拡大せず、消費も伸びていない。そうした現状について、我々はどう考えたら良いのでしょうか。それはお金はたくさん刷っているけれども、個人の懐にまでは十分回ってはいないということだと考えて良いと思います。

 

実は、時間当たりの日本人の賃金が、過去21年間で8%強も減り、先進国で唯一マイナスとなっていることが、少し前にOECD(経済協力開発機構)の統計で明らかになりました。これでは個人消費が増えるはずもありません。

 

それに加えてもう一つの要因は、人口が減っているのに生産性(一人当たりのGDP国内総生産)が上がっていないことが指摘されています

 

理論的には、国の経済成長の要因は二つに大別することができます一つは人口が増加すること。これは「量の原理」ですもう一つは、国民一人ひとりがより豊かになることで、具体的には賃金と生産性が上がることです。これは「質の原理」になります

 

日本は戦後長い間、人口増加によって自然に経済成長してきました。ところが、1990年代以降、人口が横ばいになり、2008年をピークに減少に転じ近年は毎年減り始めています。にも関わらず、いまだに「量の原理」による経済成長を志向しております

 

先進国の中で最速で少子高齢化が進み、賃金は下がり、生産性は低いままですから、経済状況が良くなるはずがありません

 

日本は一人当たりのGDPが世界で26位(2018年)と、先進国の中でも生産性が最低レベルです。そこをなんとか改善しない限り、日本経済再生も難しいということです。人口が減ったのに経済成長させようと思ったら、一人ひとりの生産性を上げる以外に方法がないからです

 

【中小企業が多すぎるという構造的問題があるのでは?】

 

日本の生産性向上の大きな障害は中小企業が多すぎることだと指摘する人もおられます。経済学には「規模の経済」(スケールメリット)という経済学の大原則があります。これは事業規模が大きくなればなるほど効率が上がり、生産性は上がるという理論で、アダム・スミスの時代から分かっている古典的な原則になります。

 

そこから考えれば当然、日本に中小企業がすごく多いことは、ご指摘の通りに生産性向上の足かせになっております。

 

日本の企業の大半は中小企業であり、労働者の約70%が中小企業で働いていると言われます。その中でも約20%が社員20人未満の小企業で働いております。日本ほど中小企業の割合が高い国は先進国の中ではまれであります

 

たとえばアメリカの場合、中小企業で働いている人は国民の51%しかいません。大企業が約半分の国と、日本の様に大企業が13%しかない国では、当然、アメリカの方が「規模の経済」の原理が働いており、かつ生産性が上がるというわけであります。

 

(次回に続きます)

 

 

 

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2020/04/10(Fri)

(No.568)最低賃金の引き上げが、日本経済の特効薬では?(2/4)

   では、なぜ日本はそれほど中小企業が多いのでしょうか。その原因ははっきりしています。それは1963年に「中小企業基本法」を制定した時に、中小企業の定義の規模を非常に小さなものにしたことです。

 

そして無期限・無条件の優遇策を手厚く設けたことです。例えば中小企業というだけで法人税率が低くなります。各種補助金も、企業が小さければ小さい程たくさんもらえます。

 

日本における中小企業の定義は、製造業が300人以下、卸売業が100人以下、小売業が50人以下などと決まっていますが、従業員50人以下というのは、諸外国では小規模事業者として扱われる人数なのです。

 

するとどうなるでしょうか。従業員を50人以下に抑えて優遇を受けようとする中小企業が1964年以降、爆発的に増えたのです。

 

それらの企業の経営者には「効率を上げ、生産性を上げて、事業を拡大しよう」というインセンティブ(動機・刺激)が働かないのです。そこから、大部分の企業には、前回に述べました「規模の経済」(スケールメリット)の原理が働かず、生産性も上がらず、賃金も上がらないという悪循環の構造が生まれてしまいました

 

では、その時期にそういう法律が作られたのはなぜなのでしょうか。これは理由がはっきりしております。日本がOECD(経済協力開発機構)に加盟したのが1964年です。加盟のためには貿易の自由化が義務づけられます。

 

つまり、戦後初めて外国に門戸を開くことになったわけですが、そのためには日本の中小企業を全面的に守らなければならなかったのです。そうだったのです。それならば、その後に法律を変えて優遇策を見直せば良かったのにと思われます。が後の祭りでした。

 

これは推測に過ぎませんが、人口が増え続けていた時代には、中小企業が多いことが政府にとっては都合が良かったのでしょう。多くの人を雇用してもらえたからです。人口が増加している時代には生産性が低くても経済成長は続きますから、失業率が高まるよりは人々を中小企業に雇ってもらった方が良かったのです。

 

しかし、人口増加が止まったとたん、中小企業が多いことのマイナス面が一気に露呈してしまったというわけです

 

人口の増加が止まったのは90年代で、もう四半世紀も前になります。その間にどうして変えられなかったのでしょうか。多分、そのころはまだ、「中小企業が多すぎることが日本経済停滞の主な原因だ」という認識を多くの人が持っていなかったからだと思われます。残念であります。

 

日本経済と言えば大企業にばかり目が向いていて、中小企業の構造的な問題は誰も分析していなかったし、認識さえもしていなかったのです。そういえばそうだったと思います。ただ、最近ようやく「日本の問題は中小企業が多すぎることだ」と主張する経営者が増えてきた様であります。まだ経済界のコンセンサス(合意)とまでは行かないまでも、少しずつですが、増えて来たのを感じております。

 

(次回に続きます)

 

 

 

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2020/04/17(Fri)

(No.569)最低賃金の引き上げが、日本経済の特効薬では?(3/4)

  【真の大企業が、ほとんどないのが日本である

 

ここまでの考察で、中小企業が多すぎることの弊害を理解していただいたと思います。しかし、日本の場合、「規模の経済」の原理が働くはずの大企業も軒並みに凋落しています。1989年(平成元年)には、時価総額で世界のトップ50に入る企業が日本に32社もありました。それが2018年にはトヨタ自動車だけです。この変化をどう考えたらよいのでしょうか。

 

一つには1989年の時価総額がバブル期ゆえの過剰評価だったということもあるでしょう。米国の経済紙「フォーチュン」がグローバル500というグローバル企業の収益ランキングを発表しています。その2019年版では日本企業が52社ランクインしていますが、そのうち各業種のトップ企業になったのはたったの2社だけです。

 

ということは、日本の大企業の大半は、世界から見たら大企業と呼ぶに値しないのです。中小企業が多すぎることと同じで、日本は大企業さえも細分化しすぎているというわけなのです。

 

IT革命」でも、日本企業は完全に出遅れました。GAFA(ガーファ)と言われるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなど米国企業ばかりがグローバル企業になって、日本には1社もありません。これはなぜでしょうか?

 

それは本質的には、先ほどの「中小企業が多すぎる弊害」と同じ話です。米国は昔から大企業中心の経済の国なのです。ITの最先端技術は開発にも導入にも人手と規模が必要なので、大企業中心の国の方がどうしても有利になります。

 

例えば、最先端技術が使える企業の顧客が豊富にいて、新しい技術をそれらの企業に買ってもらうことで産業として発展します。一方日本では、半分以上の中小企業が、売上が大きくても1億円程度なので、最先端技術を開発したり導入したりしようとしても国内に十分な顧客基盤がないのが現状なのです。

 

先日、ヤフーとLINEが合併して1兆円企業になりました。あのレベルの企業でさえも、合併してようやく1兆円なのです。大企業と中堅企業が少ないことの悪影響は様々な形で現れます

 

例えばドイツでの分析では「企業が輸出を継続的に行うには、少なくとも158人くらいの社員数が必要である」と発表されました。

 

ということは、50人未満の企業が膨大にある日本は、輸出面で大きな不利を抱えているというわけです。特に日本の国内市場はどんどん縮小していくわけで、輸出を重視しないとやっていけない時代になって行くのにですね・・・。将来が思いやられます。

 

どうして日本では「中小企業はどんどん合併して大きくならなければ、生きて行けない」という動きが活発化しないのでしょうか。一つには中小企業経営者の側に危機感が薄いことがあると思います

 

心理的な面でも、日本人は「中小企業大好き」ですから、中小企業の経営者に対して向けられる目が暖かいのです。マスコミも中小企業をあまり批判しないし、社員も他の国と比べれば経営者に優しくて、厳しいことをあまり言いません。上場していないので、ガバナンスは非常に甘いのです。 

 

先ほど「アメリカは大企業中心の国」と言いましたが、言い換えれば「大企業になっていくか、それとも消えていくのか?」という二つの道しかない国だということです。小さくても有望な企業を大企業に育て上げる力こそが、アメリカ経済の力なのです。確かにアマゾンやフェイスブックやグーグルなどは、一昔前には存在しない会社だったのに、今や巨大企業であります。

 

アメリカは中小企業から中堅企業になり、やがて大企業になっていく力を持った企業を応援するのです。それに対して日本は、中小企業というだけで一律に優遇しているので、成長していませんし、本来消えていくべき企業(ゾンビ企業と呼ばれる)が生き残っているのです。

 

弱いから優遇するのではなくて、強くなる会社だからこそ優遇する」という形に変えて行かないといけないのではないかと考えています。逆転の発想が必要であると思います。

 

(次回に続きます)

 

 

 

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2020/04/24(Fri)

(No.570)最低賃金の引き上げが、日本経済の特効薬では?(4/4)

  【最低賃金の引き上げが経済再生の早道であるのでは?】 

 

人口減少が進む日本で経済を再生させるには、最低賃金を引き上げるしかないと提唱している方がおられます。デービット・アトキンソンというイギリス人で日本の企業の社長をなさっている、見識もかなり高い方です。

 

しかし、日本商工会議所は、「最低賃金を引き上げると中小企業の倒産が増えて景気が悪くなる」と反対しています。経営者側の意見を代弁しています。もらう側の立場に立てば、賃金やお給料が増えて嬉しいばかりだと思います。どちらの立場で考えるかで、まるっきり反対の意見になってしまいます。困ったものであります。

 

では、どうして最低賃金を引き上げると経済が良くなるのでしょうか?それはまず、海外の研究によれば、最低賃金の引き上げと生産性向上には因果関係があることがすでに解明されているからです議論の余地はないのです

 

前述しましたが、生産性向上は日本経済の大きな課題ですから、そのためにも最低賃金の引き上げをする必要があると言うことになります

 

それと、何回も触れてきましたが「規模の経済」の追求という「出口」を示して、中小企業の合併をどんどん進めて行かないといけないわけですが、「出口」を示しても商工会議所の反対が示す様に、日本の中小企業経営者の何割の方々がその道へ進むのかが、まったく見えませんし保証がありません。

 

日本の中小企業の経営者は危機感が薄いと述べましたが「現状のままでいい」と思ってしまう経営者が多いと言う懸念もあります。「人口減少で過剰になる国内供給の分、海外に販路を広げないと生き残れませんよ」と言ったところで、「いや、うちは国内だけでなんとかなるし、外国人相手の商談なんかしたくはない」と思う人が多いかも知れません。

 

だからこそ、最低賃金を引き上げて、規模の経済を追求しなければ中小企業が生き残れない状況を段階的に作る必要があるのです社長達が必死になる様に背中を押すことが必要なのです

 

ではここで、外国の事例や歴史に学んでみたいと思います。まずイギリスに学びますが、イギリスも日本と同じく社会保障負担が大きくなっているのに生産性が低迷していましたから、最低賃金を引き上げました。生産性を上げて、給料を上げずに税金を上げると、その政権は選挙で負けてしまいます。そこで、選挙に勝つために賃金を上げるほうを選んだのです。

 

当然、経営者側は不満を言いましたが、経営者より労働者の方が圧倒的に多いわけで、労働者の声を聞いた方が選挙で勝てるわけです。日本も同じです。経営者側は引き上げに反対ですが、日本の経営者が約360万人なのに対して、労働者は約6000万人以上います。どちらの方を向けば選挙に勝てるかは言うまでもないでしょう。

 

現在は労働党から保守党に政権が変わっていますが、最低賃金制度はそのままで変わっていません。その理由は、導入時には失業率が大量に増えると言われましたが、逆に失業率は導入後にむしろ下がっています。税収も増え、生産性も上がりました。それでこのままの方が良いとなり、保守党政権が賃上げを加速させたのです。

 

次に、韓国の事例にも学んでみましょう。2018年に最低賃金を引き上げましたが、失業者が増えて失敗いたしました。これは一気に上げ過ぎたからです。初年度に16%、2年間の合計で約30%も上げましたから失敗しています。

 

経済学では、賃金は段階的に上げて行くことが大原則なのです。アメリカの研究によれば、単年度に12%以上あげると経済的に悪影響が出ると言われています。残念ですが、韓国ではその理論が生かされていなかったのですね。

 

では、日本の場合はどれぐらい最低賃金を上げたら良いのでしょうか?アトキンソン氏の計算では、年率5%の引き上げが適切な数値であると言われてます。安倍政権ではここ4年程、年平均で3%の最低賃金引き上げを行ないましたので、もう少し頑張ってほしいと思います。

 

最後にアトキンソン氏の言葉を紹介して終わりにしたいと思います。「私も経営者ですから、毎年社員の最低賃金を上げるのはつらいです。だから、引き上げに反対する経営者の気持ちも良く分かります。ただ、国益を考えれば上げるしかないでしょう。日本経済が上向けば、自社にとっても必ずプラスになるのです。もう、社員を犠牲にして経営を成り立たせる時代ではない様ですね」とのことであります。

 

日本にどっぷりと浸かっていては、自分の国の状態が明確に見えない様ですね。良く言われていますが、多様性というダイバーシティが働くことによって、外国の方から日本を眺めると良く状態が明確に見えるということだと思います。ダイバーシティは変革(イノベーション)の起爆剤になり得るのですね。ご参考に。

 

 

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