(No.466) 布施の教えに学んで人間性を高めましょう (5/5)
【自分を振り返る時間をもつ禅定(ぜんじょう)】について
次に「六波羅蜜」の五番目の「禅定」(ぜんじょう)は坐禅を組むという意味のようですが、簡単に言えば自分を振り返る時間を持つということなのです。自分の心を静かに安定させ、落ち着かせて、自分自身を振り返る時間を持たなかったら人生も仕事も絶対に上手くいかないでしょう。ばたばたばたばたと走っている人は、必ずステーンとひっくり返るでしょう。だから人間には自分を振り返って、じっと内省する時間が絶対に必要なのです。走ってばかりではダメだと言うことなのですね。
坐禅と言えば精神集中をするものだとの誤解があるようですが、これも精進(しょうじん)と同じで頑張りすぎはいけません。もちろん散漫な心で行なってはいけませんが、坐禅に限らず、どうも日本人は「精神一到何事か成らざらん」という言葉を好んで、死に物狂いで一つのことに精神集中をしすぎるようです。禅定(ぜんじょう)とは、むしろ心をゆったりとさせる技術のことだと考えていただきたいと思います。精神集中は大事なことですが、気分転換のためには、時にはぼけーっとすることも同時に大事であり、そのバランスをとることも禅定(ぜんじょう)なのであります。
【磨かれる智慧(ちえ)】について
「六波羅蜜」の最後で六番目の「智慧」(ちえ)は、これまで述べてきました、「布施」(ふせ)「持戒」(じかい)「忍辱」(にんにく)「精進」(しょうじん)「禅定」(ぜんじょう)の五つを実践する際に必要とされるものです。
「智慧」と残りの五つの波羅蜜は車の両輪の関係に相当するもので、両輪がうまく回ってこそ、前に進むことができるのです。例えば布施にしても、「私にできるのはこれだけです」という気持ちが大事であると以前に説明致しましたが、そうした考えこそが智慧に他ならないと思います。
満員の電車やバスで、お年寄りや身体の不自由な方が前におられたら、席を譲ってあげて下さい。それも布施(ふせ)の実践になります。しかし、その際、可哀想だからという理由で席を譲っては布施にはなりません。そうした方々に座ってもらった方が自分が嬉しいからこその布施であり、「座っていただいてありがとうございます」と心の中でお礼が言えれば、それこそが布施の心なのです。仮に疲れていて席が譲れなくても、心の中でお詫びができれば布施になるのだと考えて下さい。
この様な気持ちこそが智慧(ちえ)ですし、布施を実践してゆく中で智慧は芽生え、磨かれてゆきます。布施に限ったことではありません。戒律を破る時、「申し訳ありません」と謝るのも智慧になりますし、戒律を守るのにも智慧が必要になります。忍辱(にんにく・・・耐え忍ぶこと)をすることでも智慧がつき、智慧によって忍辱が実践できるのです。
要するに五つの行を実践することで自然に身に付くものが智慧であると考えて頂きたいと思います。「六波羅蜜」のこうした相互の関係と構造を理解して頂いて、「六波羅蜜」を日常生活の中で是非とも皆さんと一緒に実践してゆければと思っております。
最後に今回のコラムの「六波羅蜜」の体系をまとめておきたいと思います。全体の振り返りの参考になさって下さい。
一番目の「布施」(ふせ)・・・人に喜びを与えること。必要なものを与えること。不要なものは布施にならない。「施者」(せしゃ)「受者」(じゅしゃ)「施物」(せもつ)の三つが清らかであること
この布施の中に「無財の七施」(むざいのしちせ)がある・・・物やお金がなくても布施はできます。以下の七つです。
1. 眼施(げんせ) ・・・優しい眼差しで人に接すること
2. 和顔施(わがんせ)・・・ニコッとして優しい穏やかな顔で話をすること
3. 言辞施(げんじせ)・・・落ち込んでいる人を言葉で励ますこと。言葉で施しを与えること
4. 身施(しんせ) ・・・捨て身になって人に尽くすこと
5. 心施(しんせ) ・・・善意の真心を施すということ
6. 床坐施(しょうざせ)・・・席を譲ること
7. 房舎施(ぼうしゃせ)・・・人を一晩泊めてあげること
「ビジネスにおける布施」(ふせ)について・・・利他・喜他・幸他の精神を先にもつことです。
六波羅蜜の
二番目の「持戒」(じかい)・・・戒律を守り、欲を断つこと
在家の人に与えられた「五戒」と言う戒律もあります 以下の五つです。
1.「不殺生戒」(ふせっしょうかい)・・・生き物の命を奪わない、殺さない
2.「不妄語戒」(ふもうごかい) ・・・嘘をついてはいけない
3.「不偸盗戒」(ふちゅうとうかい)・・・盗みを禁じる
4.「不邪淫戒」(ふじゃいんかい) ・・・みだらな愛欲の行為を禁じる
5.「不飲酒戒」(ふおんじゅかい) ・・・深酒をするほど飲んではいけない
三番目の「忍辱」(にんにく)・・・受ける迷惑を耐え忍び、耐える力を養うこと
四番目の「精進」(しょうじん)・・・努力する 一所懸命、一心不乱に打ち込むこと
五番目の「禅定」(ぜんじょう)・・・心を静かに落ち着かせること 内省すること
六番目の「智慧」(ちえ)・・・上の五つの行で自然に身に付くもの
以上です。
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