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    山口一道

    Author:山口一道
    山口経営コンサルタント事務所 代表
    YMCグループ 代表理事

    長崎大学経済学部卒
    経営コンサルタント業歴35年
    リーダーシップをはじめ幅広いテーマに対応 
    リーダーのあり方に警鐘を鳴らし、若手経営者の育成に力を注いでいます。

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2019/09/27(Fri)

(No.540) 大企業の不祥事はなぜ続くのだろうか? (3/3)

  【現場からの通報は評価しなくてはいけない】

 

しかしながら、内部統制に力を入れたところで、現場で起こる全ての不正にまでは目が届きません。神戸製鋼では納期に間に合わせるという理由で検査データを改ざんしました。三菱自動車は他社との競合に焦るあまり、ガソリン1リットル当たりの燃費を偽装しました。そのような改ざんや偽装はトップの指示ではなく、現場が勝手に判断して行っていることが多いのです。見抜けるのは現場で働く人だけなのです。

 

その現場の声を上層部に安心して伝えることが出来るのが内部通報制度なのです。しかしこと日本の企業においては、制度はあっても現場はまず不正を通報しようとは考えないでしょう。その後の犯人捜しと不利益な取り扱いを恐れるからです。

 

東芝の不正会計問題では、現場の社員が内部通報制度によって不正を伝えたものの、それが受け入れられなかったために証券取引等監視委員会に告発しています。不正に対して疑問を持つ現場が通報してくれるおかげで社長は退任を免れ、会社の名誉は守られるのです。

 

現場で何が起きているのかを直視して、早急に改善することこそが大事なのに、誰がどんな動機で通報したのかとそればかりに執着して、肝心の不正には目をつぶり、隠蔽(いんぺい)する。組織内の軋轢(あつれき)を避けて、もたれ合いを是とする日本企業の悪弊と言う他ありません

 

現場が不正を行う要因として、過重な負担を強いられていること、も指摘しておく必要があるでしょう。工場を例にとりますと、長年現場を支えてきた熟練工が定年でいなくなった場合、会社は人件費を抑える目的で新人や非正規の社員を採用し、その穴を埋めようとします。

 しかしながら、技術や能力がないスタッフばかり多く集めたところで、生産性と現場力が高まるはずはありません。より質の高い製品を、より多く生産せよという上層部からの圧力で、中堅社員たちは悲鳴を上げているのです。

 

むしろ、人件費は高くとも三人前働いてくれる能力ある人材を積極的に採用し、あえて人間の力を必要としない仕事はAI(人工知能)に変えて行くというバランス重視の企業努力が会社に活力をもたらし、業績の向上にも繋がると思います。

 

経営者が忘れてはいけないのは、そこで働く人間を皆ハッピーにすることです。生産性を向上させ労働時間を短くする「働き方改革」は必要だとしても、社員の幸福感をその根底に据えて置かないと、企業の力そのものを失速させてしまい、社内に不平不満の火種をくすぶらせることになってしまうでしょう。

 

【前例踏襲が通用しない時代になりました】

 

事件を起こす企業に共通するものの一つが社員のコミュニケーション力、つまり人間力の欠如になります。社内の風通しが良い企業であれば、現場の社員から部門長、部門長から上層部へと不正の事実が伝わり、全社を挙げてそれに対処するというムードが自ずと生まれて行きます。

 残念ながら、日産の新車無資格審査問題も、神戸製鋼の検査データの改ざん問題も、幹部社員がそれを知っていながら、黙殺していました。そこにはコミュニケーション力も、一流企業としての誇りや矜持(きょうじ)も感じられません。

 

企業の不正防止にはガバナンス(企業統治)とコンプライアンス(法令遵守)が大事であることは前述致しましたが当然であります。しかし、いくら制度を改革してもそれを担うのは人間なのです。制度を生かせるかどうかは、ひとえに人間力にかかっていることを忘れてはいけないのです

 

最後に、不祥事を起こした当事者がよく口にする「前例踏襲」という言葉について触れておきます。社会が激変し、いまや前例踏襲が全く通用しない時代に突入いたしました。20年から30年前の法律や習慣がそのまま通用するのか、時には立ち止まって冷静に考えてみることも必要でしょう。

 

寝食を忘れて猛烈に働いていた、かつてのサラリーマンの常識を今の若者に伝えていても、彼らは聞く耳は持たないでしょう。「働き方」について意識の転換を求められるように、企業の文化も制度も仕事のやり方も前例踏襲のままでは新しい時代に対応できなくなっています。

 その変化に向き合って、会社を変えて行くことこそが不祥事を防ぐコンプライアンス(法令遵守)になるのではないでしょうか?ご一考を!!

 

 

 

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