(No.549)人口減少で日本に何が起こるのか? (3/4)
私たちはまず、日本の人口がこれから猛烈なスピードで減ってゆくという、不都合な事実を受け入れることが必要になるでしょう。その上で、例え働き手が減っても豊かさを維持できる新しい社会の仕組みを確立していくことが求められております。口で言うのは簡単ですが、難問ばかりで一筋縄ではいかないかも知れません。
これまでの様に、GDP(国内総生産)の国際競争にしゃかりきになる必要はないと思います。豊かさの基準そのものを変えて、新しい発想で人口減少時代に対処していくことが重要だと思います。例えば、24時間営業のコンビニエンスストアに代表される便利過ぎるくらいに行き届いたサービスは本当に必要なのでしょうか?その維持には、たくさんの労働力を必要とするでしょう。今、この件に関しては、盛んに新聞などで動きが活発になっている様ですね。
また、国際競争力の低い産業を、わざわざ外国人を呼んでまで維持する必要があるのでしょうか?今後は、選別をいろんな場面でしてゆく必要があるのではないかと思います。
若い世代が減ることに対応するには、東京、大阪、名古屋といった巨大都市を中心にして回る国家からの脱却も考えなければなりません。むしろ、各地に拠点を設ける「拠点化国家」を目指すことが重要になるかも知れません。各地の拠点が大都市依存から脱却して独自の豊かさを追及し、多様性に富んだ社会を実現していく方が大事になるかも知れません。従来の固定観念からの脱却が求められてゆくかも知れません。
これについては、すでにヨーロッパでの成功例があります。イタリアやスイスでは、例えば1000人の村には1000人が潤うだけの仕事があります。その村にしか作れないユニークで、クオリティ(質)の高いものを作っているので、世界中からバイヤーが集まりお金を落としてゆくのです。この事例は我が国においては、何かの参考になるかも知れませんね。
働き手世代(生産年齢人口・15歳から64歳までの人口。約7545万人、2018年10月現在。全体の比率は59.7%。過去最低。目下、毎年、50万人以上が減少しています)が減る日本が豊かさを維持するには、少量生産でも付加価値を付けて、一つひとつを高く売っていくというビジネスモデルへのシフトが必要になるでしょう。
日本にも各地に素晴らしい伝統産業があります。そこに新たな発想と技術を加えて磨きをかければ、世界から注目される魅力的な地域へと変革を遂げることは十分可能だと思います。
これらの取り組みを通じて、人手をかけずに生産性を向上させて行けたならば、日本の特性や技術を生かした新たな成長分野に、思い切って人材を投入していく余力も生まれてくることでしょう。一般に言われています、地方創生のことになるかと思います。
日本全国、どこの地方においても、都市部への流失や高齢化により経済が徐々に縮小していっており、地方創生は全国的に最大の課題であると思います。日本全国総力を挙げて真剣に取り組むべき課題であると認識しております。
人口が減少していくことが避けられない今後は、それを前提として社会をつくり変えていくしかないでしょう。求められる現実的な選択肢は、拡大路線でやってきた従来の成功体験と決別し、豊かさを維持しつつ“戦略的に縮小する”策が重要になるでしょう。そのためには、多くの痛みを伴う改革が求められると思います。
それを乗り越えて、人口減少時代に対応できる新しい成功モデルを一刻も早く作り上げるためにも、従来のセクショナリズムから脱却し、国が一丸となって改革を進めて行かなければならないと考えています。産学官などで連携してプロジェクトチームを作って早速、国を挙げ、地方を挙げて行動してゆかなければと思います。
(次回に続きます)
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